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まぞう

魔像

林 不忘

新版大岡政談

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 131,494 字 · 260 页

青空文庫

「どこからおはいりなされた? ウム? どこからおはいりなされた? ちょうどいま、貴殿、取押え方を相談致しておったところじゃよ。よい時に参られた。当方は、これだけ人数がそろっておる。イヤ、せっかくの悲願首蒐めじゃが、その貴殿の首狩りも、あの松原氏の四番首を最後に、今宵これにて打ち切りということになりますかな」

アハハハ……面白そうに肩を揺すって笑った。

二

アハハハ……面白そうに、肩を揺すって笑った。

面白そうに肩を揺すって笑いながら、越前守忠相は、ジロリと金山寺屋を見据えて、次ぎの言葉を出すまで、暫らくの間を置いた。

外桜田、南町奉行大岡忠相のお役宅である。

山の手の夜は海底のようだ。その暫らくの間を埋めて、深森と耳の痛くなるような、音のない夜の音が聞えて来る。

と言うと、寂然として風流澄心の感あるが、風流どころか、金山寺屋音松は、生きたこころもない。胸は波を打ち、耳は火照るし、眼はくらんで、冷汗が腋の下を伝わるばかり、顔も上げられないのだ。

「へえ」

と言ったきり、口をモゴモゴさせて頭を掻いていると、越前はつづけて、

「どうじゃナ、わしはまだ一度も、早朝、富士見の馬場へ試乗に参ったことはない」