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まぞう

魔像

林 不忘

新版大岡政談

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 131,494 字 · 260 页

青空文庫

この騒動の原因は、すべて喬之助妻園絵こと伊豆屋のお園から出ているのだから、伊豆屋をも快く思っていないことは勿論である。そこへ、山城守には覚えめでたい長庵が間に立っていてくれるのだから、この話はもう成り立ったも同然だと、筆屋幸兵衛は、明日にもお城からお呼び出しが来て、お油の御用一切をあらためて申し付かることであろうと、毎日こころ待ちにしているのだが――。

鼻薬として筆幸から山城守へ届けられた金は、途中、長庵の手で半分くすねられて、肝腎の山城守のふところへは、半金しかはいっていないのだから、山城守は内心、筆屋はけちなやつだと思っている。おまけに今度は、幸吉の訴人の件で、山城守は八丁堀へ顔向けが出来なくなったから、どうも筆屋は怪しからぬという印象を与えて、この話も、筆屋が楽観しているほどは、スラスラと運びそうもないのである。

あまり長庵が、筆幸のことを五月蠅く頼み込むので――もっとも長庵としては、このはなしが成り立てば、いずれ筆屋から、たんまりお礼を貰う約束があるからだが――山城守は交換的に、長庵じしんに、一つの仕事を命じたのだった。

それがうまくいったら、筆屋の油御用のほうも、奔走して纏めてやろう――そうは言わないが、いわなくても解っている。