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あゆのくいかた

魯山人の食卓

北大路 魯山人

北大路魯山人『魯山人の食卓』。同一底本的分册已合并为一书。收入:鮎の食い方、いなせな縞の初鰹、鰻の話、京都のごりの茶漬け、車蝦の茶漬け、塩昆布の茶漬け、鍋料理の話、握り寿司の名人、日本料理の基礎観念、鱧・穴子・鰻の茶漬け、一癖あるどじょう、河豚は毒魚か、鮪の茶漬け、鮪を食う話、味覚馬鹿、夜寒に火を囲んで懐しい雑炊。

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 54,022 字 · 115 页

青空文庫

飯とパンと同時に賞味できるからだ。戦後十年くらいまでは、京橋、日本橋あたりの目抜きの場所といえば、相当やかましい寿司屋もあり、やかましい食い手もあった。その当時、新橋駅付近に、千成と名乗る嵯峨野の料理職人が、度胸よく寿司屋稼業を始め、大衆を相手にして、いつの間にか職人十数人を威勢よく顎で使って、三流寿司を握り出した。千成はデパートに真似て寿司食堂を造り、数多くのテーブルを用意し、一人前何ほどと定価のつく皿盛寿司を売り出した。この手は安直本位なので、世間にパッと拡がってしまった。そして遂には、東京中に寿司食堂が氾濫してしまった。江戸前寿司の誇りを失ったのはこの時からである。

さて、寿司らしい寿司にはどんな特色があるだろう。寿司らしい寿司というからには、もちろん一流の寿司であって、気の毒ながら大衆の口にはいる寿司ではない。今でも一皿、握りが七ツ八ツ盛られて、五十円とか八十円とかの立看板もあるが、これから話そうとする寿司は、そんないかさまものを指していうのではない。ただの一個が五十円以上百円の握りを指すのである。しかし、いかさまものの多いなかに、良心的な本物もなにほどかあって、わたしなどは盛夏の食べ物に困りきっている時など、大いにそれで助けられ、大船から暑さを意とせず、毎日のように新橋へと足をのばしたものである