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ろじんさん
魯迅さん
内山 完造
「図書」岩波書店、1955(昭和30)年8月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 8,269 字 · 17 页
魯迅さんはずっと長い間寝ておったのですが、日本人の医者で須藤五百三という人がいつも診ていた。十月十八日の日でしたね。毎日新聞の松本槍吉君だったと思う、が魯迅さんに会いたいといって、十八日の午前十時に会うことにしておった。そうしたら朝、魯迅さんが手紙をよこして、昨夜から喘息がおこって、松本に会えないよろしくたのむ、須藤さんにすぐ来てもらいたいということが書いてある。魯迅さんは奥さんが広東人だから、ぼくには広東語は通じないと思うので、いつでも手紙をきちんと書いてよこす。それがこの朝の手紙は字がひじょうに乱れているので、これはいけないと思って、須藤さんに電話をかけておいて、すぐかけつけた。大変な苦痛で、籐の寝椅子にもたれて、それでもまだ煙草をもっている。呼吸をみていると吐くばかりで吸う力がない。これはいかんと思った。どうかな、というと、どうも苦しい、という。横になったらいいだろうといって、背中をなでていたが、やめてくれという。そのときぼくは卵の油からとった喘息の薬をもっていっていた。これをのむとちょっとおさまると、今までもすすめたことがあるんだが、そんなものはいやだといってのまなかった。