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かじかのたまごについて
鰍の卵について
佐藤 垢石
「釣趣戯書」三省堂、1942(昭和17)年
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 1,363 字 · 3 页
ところが、漁師は鰍の卵などというもの、見たこともない。そんなもの、餌になるのかという答えであった。
そこで、私は鰍の卵の効能を述べたのである。もしこの川に鰍がいれば、必ず山女魚はその卵を好んで食うものであると、つけ加えた。すると漁師は、鰍はいくらでもいると言うのである。
翌年の春、試みにその漁師に一塊の鰍の卵を送って試してみろと言った。漁師からすぐ返事がきて、素敵な成績である。自分は送ってもらった卵を大切にして、他の漁師にないしょで、ひとり楽しんでいる、というのであった。
それ以来、吾妻川の上流では、鰍の卵を捜してこれを餌に用いるようになった。鰍の卵は塩漬けにして蓄えるか、串にさし陽かげ干しにして蓄えるのである。いまは、全国至るところ、山女魚や岩魚釣りの餌に、鰍の卵を使わぬ釣り人はない。