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なるとひちょう
鳴門秘帖
吉川 英治
03 木曾の巻
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 56,957 字 · 114 页
「はて? ……」と、その方策に腕をこまぬいた時、かれは、岩の間から拾ってきた、竹屋三位の懐紙入れを思いうかべて、中を開いてみる気になった。
別にこれぞという物もなかったが、その懐紙挟みの中に、一帖の絵図がしのばせてあった。
小形な法帖みたいに折り畳んであるので、サラリと押し開いてみると、竹屋卿がわらじがけで実地を写したものらしく、徳島城の要害から、撫養、土佐泊、鳴門のあたりを雑に書きかけてある海図だった。
だが、世阿弥の目には、それが書き半端な海図とのみ単純には看過されなかったとみえて、
「お、これは、軍船の配りや布陣の線を引いたものじゃ。や、鏡島の袋潟――鳴門の裏海には、いつのまにか、こんなにも多数の軍船がひそめてあったか」
と、図面の角点を数えて目をみはった。
「よいものが手に入った。これも、一つの証拠にはなる。しかも、公卿方の者が自写したのは、何より有力な証拠品である。ウム、そうだ、これへ自分が隠密して探り得た箇条を書き加えて……」
ひとりうなずいた甲賀世阿弥は、ふすまに使っている鹿の毛皮をとりだし、また、瘤山の窪みへ下りて、手ごろな篠を切ってきた。