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なるとひちょう

鳴門秘帖

吉川 英治

03 木曾の巻

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 56,957 字 · 114 页

青空文庫

「私の尋ねてゆく人って? ……」

「トボけちゃいけませんや、お前さんの旦那様だ」

お米はほろ苦い顔をした。

仔細をきくと、甲比丹の三次は、去年以来、禁制の密貿易をやるぬきやの仲間とちりぢりばらばらになって、諸方の港場を流れていたが、うまい仕事も見つからないので、これから尋ねてゆく森啓之助に、身の振り方をつけて貰うのだといった。

「なんだい、この虫ケラは?」

と側にきいていた宅助は、その虫のいい言い草と、三次の図太い面構えにあきれている。

お米とすれば、もと大阪の店へ来つけた客ではあり、啓之助とこの男と、どんな関係があるかないかも知らないので、話に釣られながら、肩を並べて歩きだすよりほかなかった。

「ふざけた野郎だ」

虫の納まらない仲間の宅助、後から来て先へ立った甲比丹の三次へ、突ッかけるように、

「おい!」と声をかけた。

「なんでえ!」語気が同じに弾んでくる。

「どこへ行くんだ、てめえは一体」

「今もいったとおり、森様へ用向きがあるんだ。城下のお屋敷をたずねたところが留守、じゃテッキリと思って、お米さんの妾宅へ行ったところが、そこも留守だ。で、だんだん探ったところが、吉野川を舟でお前たちが上ったということが知れたから、やッとこうして道づれになれたてえものよ」