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なるとひちょう
鳴門秘帖
吉川 英治
03 木曾の巻
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 56,957 字 · 114 页
「ふた股武士めッ」とののしった。
その煙管が運わるく、小柄のように、コツンと周馬のこめかみを打ったので、さすがのかれも、そのまま後ろをみせて立ち去ることもならず、
「ウヌ!」
と腰の一刀を抜き払って、天堂一角の真眉間へ跳びかかった。
抜くまでの意気地はあるまいと、周馬の足元を、あまり見くびりすぎていたのと、左手の利かないために、一角は不意をくらって、あッ――とうしろへ飛びかわしたが、大きな玉石につまずいて、よろりと腰を砕いたので、仆れながら片手払いにパチンと抜きあわせた。
お十夜はニヤニヤ笑って眺めていた、吸いつけた煙管を口にくわえたままで。
この勝負をほうっておいたらどうなるだろう?
天堂一角にして左手の自由がきけば、もちろん、勝目は問うところではないが、まだ繃帯のとれぬ片腕が、よほど体のかけ引きを妨げるから、そこに、かなりな力量を減退されるものとみなければならぬ。
一方の周馬はといえば、これは、太刀筋において、グッと劣るが、最初から、あらん限りな罵詈を浴びせられた揚句で、無茶にムラッとした途端の切ッ尖であるから、ふだんの周馬の実質よりも、相当な強みを加えている筈だ。