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なるとひちょう
鳴門秘帖
吉川 英治
03 木曾の巻
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 56,957 字 · 114 页
例年当寺ニテ執行ノ阿波丈六寺代印可ノ儀併ビニ遍路人便乗ノ扱イ等俄ニ阿州家ヨリ御差止メ有之候ヲ以テ中止イタシ候尚秋船ノ遍路ハ其折再告申スベキ事。
「あ! ……こ、こりゃいけねえ」
高札の真偽を疑い、おのれの眼を疑うように、万吉はくり返しくり返しそれを読みつづけたが、
「ウーム、こういう沙汰が阿波から出たとすると、いつのまにか蜂須賀家では、もう用意を固めているものとみえる」
「じゃ、この春は、遍路の者の船まで止めてしまったのかしら」
「そういうふうに書いてあるが」
「とすると……弦之丞様は?」
「さあ、どうしたか、この模様変りとすれば、国分寺に足をとめている筈はありますまい」
嘆息といっしょに腕を組んで触札を睨みつけていたが、もう意地もなく気をくじいてしまったように、
「まずかった!」と臍をかんで悔むのだった。
「俺としたことが、思えばとんだ手ぬかりをやっていた。阿波へ入る目標にばかり気をとられていて、こっちの内幕を探られていることを、少しも頭においていなかったのが大失策――、こりゃあ天堂一角が、江戸から本国へいちいち早打をうって知らしていたので、こっちの先手を越して道者船を取止めたのに違えねえ。