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めいせつじじょでん
鳴雪自叙伝
内藤 鳴雪
在线阅读内藤 鳴雪《鳴雪自叙伝(めいせつじじょでん)》,假名注音日语阅读。JLPT N2,点词查义。
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 192,693 字 · 377 页
同僚中で詩の出来る者は、前にいった菅沼と従弟の山本と、この外に中村粂之助、側役では宮内類之丞、石原量之助、また余り作りはせなかったが、叔父の下村も多少詩を知っていた。それで私は例の時世を詠じた詩や、松山出発以来の途中の詩や、なお着京以来聞き噛った時事の問題に渉る詩などを見せたり互に次韻をしあったりして、いよいよ同僚中でもこんな才のあることだけは認められた。
この頃の京都は彼の長洲兵が、禁門に発砲した騒動で、その残党を捜索するという事から殆んど人家の大部分を焼き払った後であるので、段々と人家も出来てはいたけれど、皆粗末な板屋葺きで、所々に焼瓦の散っている空地もあった。しかし今日でいう新京極一帯の地は、小芝居から浄瑠璃、落語、その他の興行物や飲食店はなかなか盛んであった。そうして私どもの寓所よりも近かったので、誰も外出すれば、このさかり場を逍遥したものである。私は最前父が京都留守居の時こそ、家来に舁がれてしばしばここへ見物にきたのであるが、今度は文武を励む世子の側仕えをしているという自重心から、芝居浄瑠璃その他の見物は一切せなかった。ただ或る葭簀張り店で蒸し鮓を売っているのを一度食べて、美味かったから、外出すればそれを食べるのを何よりの楽みとしていた。