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とびとかきととり

鳶と柿と鶏

豊島 与志雄

「知性」1939(昭和14)年11月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 10,493 字 · 21 页

青空文庫

」

「あすこは、つまらないでしょう。」

その口振が、どうやら、小説家などという者はいつも華かな雰囲気にばかり住んでるものだと、そういう風なので、吉村はただずばりと云ってやった。

「あすこは、秋になると、安直でいいよ。」

気持がはっきり通じなくて、眼をしばたたいてるのへ、吉村はたたみかけた。

「君はまた、どうして此処へ来てるんだい。」

「僕ですか、別荘の監督です。」

「かんとく……。」

「ええ。志田さんの別荘、ご存じありませんか。」

真顔で云ってるのかどうか分らなかったが、よく聞いてみると、志田さんの家族の人たちがその夏来ていて、東京へ帰って行く時、李は雑用の手伝いに来たが、そのまま当分、別荘番のところに居残ってるものらしかった。

「おーい、みんなやるよ。」

李は振向いて、草原で遊んでる子供たちの方へ、手の中の栗を空高く投げやった。秋の午後の陽に栗の実がきらきらと光った。

草の中から栗の実を拾ってる子供たちを残して、吉村と李は海岸の方へ降りていった。

「実は、野心がありました。」と李は云うのであった。「僕は水泳がへたです。何事でも、上達して損はないでしょう。それで、水泳も上達したいと思って、ここに、志田さんの奥さんのお許しで、監督に残ったのですが、だめでした。