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とびとかきととり

鳶と柿と鶏

豊島 与志雄

「知性」1939(昭和14)年11月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 10,493 字 · 21 页

青空文庫

」

いやに感心して、また歩き出したが、すぐその先の、四つ目垣の木戸を押しあけてはいって行くのである。

吉村はおや、と目を見張った。志田さんとかの別荘へ行くものだと思っていたのであるが、そこはたしかに、上山君枝の家の裏手にちがいなかった。垣根の中のすぐそこに、低く枝を拡げた二本の柿の木が、赤い実を一杯つけていた。李はその柿の木に歩み寄り、手の届く枝を引き撓めておいて、物色しながら幾つかの実をもいだ。

「こちらからいきましょう。」

柿を持って、表の芝生の庭の方へ廻ってゆくのだった。

吉村は躊躇しながら、それでも多少の好奇心も覚えて、わざと後れながらついていった。

縁側で、もう李の声がしていた。

「今日は、私の先生を連れて来ましたから、柿をすこしたくさん貰いました。豪い人ですから、子供と一緒にはなりません。名前はご存じでしょう、吉村先生……あの、むつかしい小説ばかり書いて、自分でも困ってる人です。御紹介しましょう。」

「吉村……なんという人なの。」

「吉村清志……あのこないだも……。」

李がなにか饒舌ってる時、君枝はちょっと小首をかしげがちに、片手をかるく頬に、そして片手で鬢の毛をかきあげる素振りをして、それで李の方へ表情を隠しながら、庭に少し距ってる吉村の方へ、眼を二つ三つ大きくまたたいてみせた。