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あへんをのむびしょうねん

鴉片を喫む美少年

国枝 史郎

「オール読物」1931(昭和6)年12月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 10,061 字 · 21 页

青空文庫

で、僕は女の顔を見た。

「あ」と僕は思わず云った。

その女が彼女だったからだ。江陰の郊外でグレーと一緒に、散策していた支那美人――宋思芳と似ている支那美人だったからだ。

僕は鎧通を手から放した。

そうして寝台の一方を開けた。彼女が寄り添って寝られるように。

で彼女は僕の側へ寝た。

そうして二人は陶酔してしまった。

満足して彼女が立ち去る時、彼女は僕へ囁いた。

「他の女へ貴郎をお渡しするのは、私大変厭なんですけれど、少なくももう一人の女へだけは、貴郎をお貸ししなければならないのです」と。

僕はそれから風呂へ入れられ、別の寝室へ案内された。

扉をあけて中へ入った途端、しかし意外の光景を見た。まぎれもない宋思芳少年が、一人の外人に咽喉を抑えられ、寝台の上へ捻じ仆され、圧殺されようとしているのだ。

「タ、助けて!」と息も絶え絶えに、その宋思芳が僕へ云った。

で、僕はほとんど夢中で、その外人へ飛びかかり、持っていた鎧通で一えぐりした。外人――それはグレーだったが、もろくもそのまま死んでしまった。

友よ、グレーの血に染まった、醜悪な死骸を寝台の側へ置いて、僕と宋思芳とが寝台の上で、再度の陶酔に耽ったことを――再度というのは宋思芳と、先刻の支那美人とが文字通り、同一人だからそういうのだが――友よ、咎めてくれたもうな。