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おうがいぎょしとはだれぞ
鴎外漁史とは誰ぞ
1900(明治33)年1月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 6,099 字 · 12 页
のである。それ故に予は次第に名を避くるということを勉めるようになった。予が久しく鴎外漁史という文字を署したことがなくて、福岡日日新聞社員にこれを拈出せられて一驚を喫したのもこれがためである。然るに昨年の暮にんで、一社員はまた予をおとずれて、この新年の新刊のために何か書けと曰うた。その時の話に、敢て注文するではないが、今の文壇の評を書いてくれたなら、最も嬉しかろうと云うことであった。何か書けが既に重荷であるに、文壇の事を書けはいよいよむずかしい。新聞に従事して居る程の人は固より知って居られるであろうが、今の分業の世の中では、批評というものは一の職業であって、能評の功を成就せんと欲するには、始終その所評の境界に接して居ねばならぬ、否身をその境界に置いて居ねばならぬものだ。文壇とは何であるか。今国内に現行している文章の作者がこれを形って居るのであろう。予の居る所の地は、縦令予が同情を九州に寄することがいかに深からんも、西僻の陬邑には違あるまい。予は僅に二三の京阪の新聞紙を読んで、国の中枢の崇重しもてはやす所の文章の何人の手に成るかを窺い知るに過ぎぬので、譬えば簾を隔てて美人を見るが如くである。