轻读日语

轻松读懂日语经典作品

ja-reading.com

轻松读懂日语,轻松阅读日语。在线阅读日语经典作品。支持在阅读过程中显示假名、查询生词、翻译句子。

きりん

麒麟

谷崎 潤一郎

「新思潮 第四号」1910(明治43)年12月1日

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 9,040 字 · 18 页

青空文庫

それは鹿の裘に索の帯をしめた老人が、畦路に遺穂を拾いながら、唄って居るのであった。

「由や、お前にはあの歌がどう聞える。」

と、孔子は子路を顧みて訊ねた。

「あの老人の歌からは、先生の歌のような哀れな響が聞えません。大空を飛ぶ小鳥のような、恣な声で唄うて居ります。」

「さもあろう。彼こそ古の老子の門弟じゃ。林類と云うて、もはや百歳になるであろうが、あの通り春が来れば畦に出て、何年となく歌を唄うては穂を拾うて居る。誰か彼処へ行って話をして見るがよい。」

こう云われて、弟子の一人の子貢は、畑の畔へ走って行って老人を迎え、尋ねて云うには、

「先生は、そうして歌を唄うては、遺穂を拾っていらっしゃるが、何も悔いる所はありませぬか。」

しかし、老人は振り向きもせず、餘念もなく遺穂を拾いながら、一歩一歩に歌を唄って止まなかった。子貢が猶も其の跡を追うて声をかけると、漸く老人は唄うことをやめて、子貢の姿をつく/″\と眺めた後、

「わしに何の悔があろう。」

と云った。

「先生は幼い時に行を勤めず、長じて時を競わず、老いて妻子もなく、漸く死期が近づいて居るのに、何を楽しみに穂を拾っては、歌を唄うておいでなさる。