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マージャンさつじんじけん
麻雀殺人事件
海野 十三
「新青年」博文館、1931(昭和6)年5月号
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 16,337 字 · 33 页
どこから風が来るのか、点火器の小さい焔がユラユラと揺めくと、死人の顔には、真黒ないろいろの蔭ができて、悪鬼のように凄じい別人のような形相が、あとからあとへと構成され、畳の上から伸びあがって帆村探偵に襲いかかるかのように見えた。
やがて探偵は、しずかに立って松山の死んでいる室を立出でて、又コトコトと音をたてて階上へとってかえした。彼は、もうセンセイでも、ホーさんでも無かった。それは帝都暗黒界の鍵を握る名探偵帆村荘六として完全に還元していた。
彼は麻雀ガールの豊ちゃん、ではない舟木豊乃を静かによぶと、階下の惨事を、手短かに話をしてきかせた。声を出してはいけないと言って置いたけれども、
「まア、松山さんが死んでるんですって!」
と驚愕したので、残っていた人達は、早くも事件が発生したことを悟って、わッと一時に席を立とうとした。帆村探偵は、そこで已むを得ず、名乗りをあげて、御迷惑ながら、係官が到着して一応取調べがすむまで、御一同は一歩たりともこの室から外へ立出でないように願いたいと申渡して、一同を制した。一方、電話で、この変死事件を所轄警察へ急報すると共に、別室に居たこのビルディングの番人に、とりあえず、死体のある室を守らせた。