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マージャンさつじんじけん

麻雀殺人事件

海野 十三

「新青年」博文館、1931(昭和6)年5月号

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 16,337 字 · 33 页

青空文庫

別に特別の発見もなかったが、唯一つ、右の拇指の腹に針でついたほどの浅い傷跡があって、その周囲だけが疣状に隆起し、すこし赤味が多いのを発見した。これは松山が、白布の張りかえのときに「痛いッ」と叫んだところのものであろうが、その傷はいつ頃からこうして出来ていたものか、詳かでなかった。毒物は、口から入ったか、注射されたか、またはこうした傷口から入ったのであるか、それは興味深い問題であるが、帆村探偵はこの傷跡をちょっと重大視したのである。

屍体の調べがつくと彼は階上にとってかえして、松山達が使っていた麻雀卓子について綿密な取調べをしてみた。松山の坐っていた場所については特に注意を払い、布をひっぱったり、鋲をはずしたり、刷毛で埃をあつめて紙包をいくつも作ったりした。それから彼は卓子の下へ潜りこむと床に顔を押しつけんばかりにしてあちこち調べていたが、吸取紙を四つに切って、四人の足の下と思われるあたりの床の上に、吸取紙をジッと押しつけ、何物かを吸いとるようにみえたが、これも又別々の紙包にして鉛筆で記号をつけた。彼は卓子の下から出ようとして、不図、みどりと松山の境界線にあたる卓脚の蔭に落ちていた針のない鋲の頭を見付けた。