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マージャンさつじんじけん
麻雀殺人事件
海野 十三
「新青年」博文館、1931(昭和6)年5月号
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 16,337 字 · 33 页
それは明らかに、第一の綿を星尾に盗まれた後の出来事に違いなかった。その綿には例の毒薬がついていたのだ。これは後に星尾の手に入ったものである。そこで彼は思いついて尋ねた。
「あなたは、電車の中で、どこに坐っていましたか」
「そうですね、あの時はあまり蒸し暑くて苦しかったものですから、となりの電車の箱との通路になっているところの窓をあけて涼んでいました。あそこは、電車の速力が加わるととても強い風が吹きこんできて、あたし、やっと気分が直ってきましたのよ」
帆村探偵はハタと膝をうった。そのとき、強い風のため、みどりの袂から脱脂綿が吹き飛ばされると、コロコロと転って星尾の前に行ったのであろう。星尾は第一の綿を豊乃に盗まれたことは知らぬから、それは自分が落したものと勘違いをしてあわてて拾いあげたものであろう。すると、問題はいよいよ狭くなった。川丘みどりが麻雀倶楽部で拾った毒物のついた綿は、誰が落したのであるか。
園部が星尾に対して殺意を生じたわけが、始めてうまく説明がつくようになった。その綿は無論、園部が犯行に使ったもので、つい誤って下袴の間から落して、川丘みどりに拾われたものであろう。