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マージャンさつじんじけん

麻雀殺人事件

海野 十三

「新青年」博文館、1931(昭和6)年5月号

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 16,337 字 · 33 页

青空文庫

「この鋲の頭には二つの指紋がついていたのです、よろしいか。一つは、無論、これで傷口をこしらえた故松山虎夫君の指紋です。今一つは彼の指紋ではない。この鋲を彼に使わせるように計らった彼の犯人の指紋なんです。用意周到な犯人が、ありとあらゆる証拠を湮滅することに成功しながら、唯一つ置き忘れた致命的の証拠なのです。

どうです。心憶えはありませんか。そうでしょう。犯人は牌に塗った毒薬をアルコールのついた脱脂綿で拭うことに夢中になって、この鋲の頭にのこる指紋を拭くことを忘れてしまったのです。――そこで園部さん、君の指紋をちょいと取らせていただきたいんですが……」

園部の顔色はこのとき急に蒼白に変じ、身体をブルブルと震わせたが、

「すまない、松山君!」

そういうと、背後へドウと倒れてしまった。

*   *   *

「あの鋲の頭に犯人の指紋はないと、君は言ったではないか」

と雁金検事が不審そうに、あとで帆村に訊いた。

「いやあれは――」

と帆村が頭を掻きながら言った。

「いやあれは兵法ですよ。あんなに機械のように正確な犯罪をやりとげた犯人も、やっぱり機械でない悲しさには、思いもつかぬことを指されると、ハッキリ用意ができていないために、急に『不安』