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マージャンさつじんじけん
麻雀殺人事件
海野 十三
「新青年」博文館、1931(昭和6)年5月号
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 16,337 字 · 33 页
「早く医者にみて貰いなさい、僕、すぐ呼んできたげるから……」と園部は、心配で心配でいても立っても居られないという様子だった。
「みどりさん、気分でも悪いのかい」
星尾助教授も競技の手を休めて言った。
「いいのよウ、直ぐなおるわよ」
「だけど、……そりゃ診て貰った方がいいですよ、ね、ね」と園部は今にも馳け出しそうな姿勢をするのであった。帆村は思いあたるところがあった。例の仲間のうちで、川丘みどりをスポーツ・マンの松山虎夫と、星尾助教授とで張り合っているという世間公知のかたわら、園部も実はみどりを恋しているのだという噂はチラリと聞きこんだことがあったが、それはどうやら本当らしい。
「お、お、おれは」と其の時まで独り黙っていた松山が苦しそうに呻いた。「おれは頭が痛い。眩暈がする。少し休みたい、ウウ」
そう云うと、彼は立ちあがり、フラフラと室を出ていった。
「いやに病人ばやりだな」と星尾が呟いて、意味なく笑った。
一本歯の抜けたような松山の空席が、帆村の眼に或る厭な気持をよびおこさしめた。それは不吉な風景である。折角こうして探偵たる気持をわすれて麻雀を打ち、のうのうとした気分になっている筈の彼の心は、いつの間にか掻き乱されているのを感ぜずには居られなかった。