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たそがれのこくはく
黄昏の告白
浜尾 四郎
「新青年」博文館、1929(昭和4)年7月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 20,453 字 · 41 页
これだけの事実は、検事には不十分かもしれない。しかしわれわれには妻の不貞を信ぜしめるに十分じゃないか。その上、平生の蓉子の口に現わせぬ態度等を考えれば文句はないんだ。しかも相手は蓉子が僕の前でさえときどき賞讃する米倉以外の誰であり得るんだ?」
「僕は夫になったこともなし、芸術家でもない故かもしれぬが君に急には賛成しにくいね。」
「けれど僕だとて、空想や邪推ばかりしていたわけではないんだ。ことに蓉子の身体に異状が来てからはかなり冷静に考えたのだ。
君はおぼえているだろう。蓉子が妊娠したことを。君に診断して貰いに来る前に、僕が君を訪ねたことを。あの時、僕は君に、一体僕は子供を作り得るかどうかをきいたはずだ。かつてある種の病気を君に治療してもらった経験から、君にはその判断がつくと思ったのだ。妻が妊娠した時、それが果して自分の子かどうかを疑わねばならぬ夫ほど、不幸なものが世にあろうか。しかも僕はそれを疑ったのだ。だから君にはっきり聞いたのだ。ところが君は、
『できぬことはないだろう。』
というような生ぬるい返事をした。恥かしい自分の立場をかくすためには、強いてそれ以上きくことができなかったのだ。