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たそがれのこくはく

黄昏の告白

浜尾 四郎

「新青年」博文館、1929(昭和4)年7月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 20,453 字 · 41 页

青空文庫

その大川竜太郎が、三十三の今日、劇薬を呑んで自殺を企てたのである。幸か不幸か、彼はすぐ死ぬということに失敗した。彼が苦悶のままその家から程遠からぬこの病院にかつぎ込まれてから、今日でちょうど五日目である。

副院長山本正雄は大川の友人であった。彼が必死の努力によって、大川は救われたかと思われた。しかし、それも一時のことであった。山本は今、大川の生命はただ時間の問題であることはよく知っている。

なぜに大川は自殺を企てたか。

大川が事実自殺を計ってこれを決行したにもかかわらず、なんら遺書と見らるべきものが遺されなかったため、諸新聞は大川の知己である文壇の諸名家の推測を、列挙して掲載したことは云うまでもない。

文士であるにもかかわらず、一片の遺書も残さぬというところから、恐らくその自殺は発作的のものではないかと憶測したものもあった。しかし大川が数日前から劇薬を手に入れていた事実、および彼がそれとなく薬物に関して他人に質問をした事実によって、その考えがまったく空想に過ぎぬことが明かとなった。したがって文壇の諸家はおのおの自己の信ずる考えを述べたてたのであった。