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おうそんせんせいげんこうろく

黄村先生言行録

太宰 治

「文学界」1943(昭和18)年1月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 13,786 字 · 27 页

青空文庫

そうして口が大きくなって、いまの若い人たちなどがグロテスクとか何とかいって敬遠したがる種類の風貌を呈してまいりますので、昔の人がこれを、ただものでないとして畏怖したろうという事も想像に難くないのであります。実際また、いま日本の谷川に棲息している二尺か二尺五寸くらいの山椒魚でも、くらいついたり何かすると酷いそうです。鋭い歯はありませんけれども何せ力が強うございますから、人間の指の一本や二本は、わけなく食いちぎるそうで、どうも、いやになります。(失言)その点に就いても私は山椒魚に対して常に十分の敬意を怠らぬつもりでございます。割合におとなしい動物でありますけれど、あれで、怒ると非常にこわいものだそうで、稲羽の兎も、あるいはこいつにやられたのではなかろうかと私はにらんでいるのでございますが、これに就いてはなお研究の余地もあるようでございます。妙なもので、あのように鈍重に見えていても、ものを食う時には実に素早いそうで、静かに瞑想にふけっている時でも自分の頭の側に他の動物が来ると、パッと頭を曲げて食いつく、是がどうも実に素早いものだそうで、話に聞いてさえ興醒めがするくらいで、突如として頭を曲げて、ぱくりとやって、また静かに瞑想にふける。