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おうそんせんせいげんこうろく

黄村先生言行録

太宰 治

「文学界」1943(昭和18)年1月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 13,786 字 · 27 页

青空文庫

欧羅巴で発見せられた化石とそっくりだという事が明白になってまいりましたので、知らぬ振りをしているわけにもゆかず、ここに日本の山椒魚が世界中の学者の重要な研究課目と相なりまして、いやしくも古代の動物に関心を持つほどの者は、ぜひとも一度ニッポンの大サンショウウオにお目にかからなければ話にならぬとまで言われるようになって、なんとも実に痛快無比、御同慶のいたりに堪えません。思っても見よ(また気取りはじめた)太古の動物が太古そのままの姿で、いまもなお悠然とこの日本の谷川に棲息し繁殖し、また静かにものを思いつつある様は、これぞまさしく神ながら、万古不易の豊葦原瑞穂国、かの高志の八岐の遠呂智、または稲羽の兎の皮を剥ぎし和邇なるもの、すべてこの山椒魚ではなかったかと(脱線、脱線)私は思惟つかまつるのでありますが、反対の意見をお持ちの学者もあるかも知れません。別段、こだわるわけではありませんが、作州の津山から九里ばかり山奥へはいったところに向湯原村というところがありまして、そこにハンザキ大明神という神様を祀っている社があるそうです。ハンザキというのは山椒魚の方言のようなものでありまして、半分に引き裂かれてもなお生きているほど生活力が強いという意味があるのではなかろうかと思いますが、そのハンザキ大明神としてまつられてある山椒魚