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きいろいばん

黄色い晩

小川 未明

「早稲田文學」1909(明治42)年4月号

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 6,173 字 · 13 页

青空文庫

しかし風をひいても、ちょっとした病気でも、晩方になると重くなると聞いていたから、それで周蔵も斯様に苦しみ出したのだ、とは子供心ながらに思わぬでもなかったが、彼の様子は実際苦しそうであった。

「母親がいなけれや仕方がない。町へ行って針医さんを呼んで来てくれないかね。」

と苦しみながらも、私に言葉を柔げて願うようにいった。

もう室の内は臥ている彼の顔が見えぬ迄暗くなったのである。私はランプを点てやろうかとも思ったが、何処にランプがあるのか分らないので、直様家を飛び出して、彼の母親に告げて、針医を迎いに行ってやろうと思った。

外に出ると黄色かった空は、いつしか灰色に黒ずんで、空には重たらしい押え付けるような黒雲が、私の村の上を去らずにいた。その雲の中でも最も真黒な所が周蔵の家の頭になっている――私は全く日の暮れないうちに行って来ようと一生懸命に駆け出して、村端の周蔵の実家に駆け付けたのである。楓の生垣をした村の細道を通り、暗い杉林の下に出たが、もはや遊んでいた子供等は、いずれも散じてしまって、誰もいなかった。私は気味が悪かったが、眼を閉いで口の中で一ッ、二ッとかけ声を出して、自から勇気をはげまして駆け出した。