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くろいひととあかいそり

黒い人と赤いそり

小川 未明

「赤い鳥」1922(大正11)年1月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 4,127 字 · 9 页

青空文庫

人間業では、どうすることもできないことだ。」

彼らは、そういって、あきらめていたのであります。

それから、幾年もたってからです。

ある日のこと、猟師たちが、幾そうかの小舟に乗って沖へ出ていきました。真っ青な北海の水色は、ちょうど藍を流したように、冷たくて、美しかったのであります。

磯辺には、岩にぶつかって波がみごとに砕けては、水銀の珠を飛ばすように、散っていました。

猟師たちは唄をうたいながら、艪をこいだり、網を投げたりしていますと、急に雲が日の面をさえぎったように、太陽の光をかげらしました。

みんなは不思議に思って、顔を上げて、空を見上げようとしますと、真っ青の海のおもてに、三つの黒い人間の影が、ぼんやりと浮かんでいるのが見えたのです。その三つの黒い人間の影には足がありませんでした。

足のあるところは、青い青い海の、うねりうねる波の上になっていて、ただ黒坊主のように、三つの影が、ぼんやりと空間に浮かんで見えたのであります。

これを見た、みんなのからだは、急にぞっとして身の毛がよだちました。

「いつか行方のわからなくなった、三人の亡霊であろう。」と、みんなは、心でべつべつに思いました。