轻松读懂日语经典作品
ja-reading.com
轻松读懂日语,轻松阅读日语。在线阅读日语经典作品。支持在阅读过程中显示假名、查询生词、翻译句子。
くろいてちょう
黒い手帳
久生 十蘭
「新青年」1937(昭和12)年1月号
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 19,026 字 · 38 页
それは何千人に一人というような個性的な顔で、額は異様に広く顎は翼のようにつよく張りだし、房のような眉の下には炎をあげているような強烈な眼があった。
彼は無断侵入が真に憤懣に耐えぬようすで「貴様なんだ」と叱※(「口+它」、第3水準1-14-88)した。自分はほとんど眼も口もあけられぬ異様な悪臭に辟易し「臭くてこれじゃ話もなにもできぬ。いま窓を開けてから話す」と答えながら斜面の天井についている窓をおし開けた。
「天井の壁が落ちてきて物騒でしようがない。暴れるのもいい加減にしておけ」彼は急にうちとけた口調になって「実はナ、今日うれしいことがあってだれかと喋りたくてしようがなかったところなんだ。おれが騒いだために貴様がやってきたというのは、こりゃなかなか運命的な話だぞ……争われないもんだ。貴様があんな口調でものをいったのがおれの感情にピッタリした。忙しくなかったらしばらくそこへ掛けて行ってくれ。実はナおれの研究はまさに完成するところなんだ。間もなくおれは無限の財産を手に入れることになるんだ。無限だ。無限、無限! 突飛にきこえるだろうが、おれは狂人じゃないよ。