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くろいはたものがたり

黒い旗物語

小川 未明

「日本少年」1915(大正4)年4月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 4,583 字 · 10 页

青空文庫

そしてある店の前に立っていると、その店の主人はまた、

「なんでそこにぐずぐずしているんだ。早くいってしまえ、人が見ていなかったら盗むつもりだろう。」

とどなりました。

子供は腹だたしさに、顔の色を赤くして、しおしおとしてその店の前を立ち去ってしまいました。

ある日二人は町の人々から追われて、港の端のところにやってきました。そこは海の中に突き出ていて、岩がそばだっています。そして波が寄せて躍り上がり、はねかえり、響きをたてて砕けていました。

空の色は一面に鉛色に重く、暗く、濁っていて、地平線に墨を流したようにものすごく見えます。風は叫び声をあげて頭の上を鋭く過ぎていました。名も知らぬ海鳥が悲しく鳴いて中空に乱れて飛んでいました。爺と子供の二人は、ガタガタと寒さに体を震わして岩の上に立っていますと、足先まで大波が押し寄せてきて、赤くなった子供の指を浸しています。二人は空腹と疲労のために、もはや一歩も動くことができずに、沖の方をながめて、ぼんやりと泣かんばかりにして立っていました。そのうちに、みぞれまじりの雨がしとしとと降りだしてきて、日はとっぷりと暮れてしまいました。