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くろてぐみ
黒手組
江戸川 乱歩
「新青年」博文館、1925(大正14)年3月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 17,978 字 · 36 页
そして翌日は娘が帰って来るものと信じていました。偉い賊になればなる程、約束などは必ず守る、一種の泥坊道徳という様なものがあることを兼ねて聞及んでいたので、まさか嘘は云うまいと安心しておりました。ところがどうでしょう、今日でもう四日目になるのに娘は帰って来ない。実に言語道断です。たまり兼ねてわしは昨日警察に委細を届出ました。けれども、警察はどうも、事件の多い中のことで、余り当にもなりません。丁度幸い甥があんたと御心安いというので実は大いに頼みにして御足労を願った様な次第で……」
これで伯父の話は終りました。明智は更に色々細い点について巧みな質問を発し、一つ一つ事実を確めて行きました。が、それらには別に御話する程の事柄もありません。
「ところで」明智は最後に訊ねました。「近頃お嬢さんの所へ、何か疑わしい手紙の様なものでも参っていないでしょうか」
これには伯母が答えました。
「私共では娘の所へ参りました手紙類は必ず一応私が目を通すことにして居りますので、怪しいものがあればじきに解る筈でございますが、左様でございますね、近頃別段これといって……」
「いや、極くつまらない様な事でも結構です。