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くろてぐみ
黒手組
江戸川 乱歩
「新青年」博文館、1925(大正14)年3月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 17,978 字 · 36 页
。余り酒のいけぬ明智はじきに真赤になって了って、いつものニコニコ顔を更に笑みくずしています。罪のない雑談に花が咲いて、陽気な笑声が座敷一杯に拡がります。その席でどんなことが話されたか、それはここに記す必要もありませんが、ただ次の会話丈は一寸読者諸君の興味を惹きはしないかと思います。
「いやもう、あんたは全く娘の生命の親です。わしはここで誓っときます。将来ともあんたのお頼みならどんな無理なことでもきっと承知するということをね。どうです。さし当り何か御望み下さることでもありませんかな」
伯父は明智に杯をさしながら、恵美須様の様な顔をして云いました。
「それは有難いですね」
明智が答えます。
「例えばどうでしょう。私の友人のある男が、お嬢さんに大変こがれているのですが、その男にお嬢さんを頂戴するという様な望みでも構いませんでしょうか」
「ハハ……、あんたも却々隅へ置けない。いや、あんたが先の人物さえ保証して下さりゃ、娘をさし上げまいものでもありませんよ」
伯父はまんざら常談でもない様子で云いました。
「その友人はクリスチャンなんですが、この点はどうでしょう」
明智の言葉は座興にしては少し真剣すぎる様に思われます。