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くろてぐみ

黒手組

江戸川 乱歩

「新青年」博文館、1925(大正14)年3月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 17,978 字 · 36 页

青空文庫

「事の起りは、左様、今日から六日前、つまり十三日でした。その日の丁度昼頃、娘の富美が一寸友達の所までといって、着換えをして家を出たまま晩になっても帰らない。我々始め『黒手組』の噂に脅されている際でしたから、先ずこの家内が心配を始めましてね、その友達の家へ電話で問合せた処が、娘は今日は一度も行っていないという返事です。さあ驚いてね。判っている丈の友達の所へはすっかり電話をかけさせて見たが、どこへも寄っていない。それから、書生や出入りの車夫などを狩集めて八方捜索に尽しました。その晩はとうとう我々始め一睡もせずでしたよ」

「一寸御話中ですが、その時、お嬢さんがお出ましになる所を実際に見られた方がありましたでしょうか」

明智が尋ねますと、伯母が代って答えました。

「はあ、それはもう女共や書生などが確かに見たのだそうで御座います。殊に梅と申す女中などは、あれが門を出る後姿を見送ってよく覚えていると申して居りますので……」

「それから後は一切不明なのですね。御近所の人とか通行人などで、お嬢さんのお姿を見かけたものもないのですね」

「そうです」と伯父が答えます。「娘は車にも乗らないで行ったのだから、若し知った人に行会えば十分顔を見られる筈ですが、ここは御存じの通り淋しい屋敷町で、近所の人といってもそう出歩かない様だし、それは