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くろねことみ

黒猫十三

大倉 燁子

「キング 一二巻一号」1936(昭和11)年1月号

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 14,366 字 · 29 页

青空文庫

昨夜はトリックで捕える計画を立て、僕は妹のトミーと円タクに乗って、君達二人が賭場から逃げるのをずうッと尾けていたんだ。処が彼奴は途中で感付いて風を食って逃げちゃった。君もてッきり同類だと睨んだので、――仕方がない。君の方を一つ洗ってみようと思って、まず家宅捜査をやってみたのさ。あの時の運転手は僕ですよ。車内に大怪我して倒れている女があれば、誰だって、君同様の手段に出るよ。何しろ警察は鬼門の連中なんだからね」とからからと笑って、

「あれだけ苦心したのに、――遂々失敗しちゃったよ」

と云って、卓子の上に置いてあった五円札を本庄の前に差出して、

「運転手、――いや僕に渡された、――これはお返し致します」

と云った。

彼は思わず顔が赤くなった。十三の前だけに一層恥しかったのだ。が、まだ狐につままれているようで、何が何やらさっぱり解らなかった。辰馬久が××会の首領であるということも初耳だ。そう云われてみれば最近彼の思想は大分変ってきてはいる。ひと頃は軟派の不良で鳴らしたものだ、辰馬の毒牙にかかった女は数えきれない、いつでも女の事で問題ばかり起していたが、この頃はそういう噂も余り聞かなくなったので喜んでいたのだが、――何という迂闊な事だったのだろう。