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ねずみざか
鼠坂
「中央公論」1912(明治45)年4月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 7,781 字 · 16 页
小川君は磚を卸し始めた。その時物音がぴったりと息んだそうだ。」
小川は諦念めて飲んでいる。平山は次第に熱心に傾聴している。上さんは油断なく酒を三人の杯に注いで廻る。
「小川君は磚を一つ一つ卸しながら考えたと云うのだね。どうもこれは塞ぎ切に塞いだものではない。出入口にしているらしい。しかし中に人が這入っているとすると、外から磚が積んであるのが不思議だ。兎に角拳銃が寝床に置いてあったのを、持って来れば好かったと思ったが、好奇心がそれを取りに帰る程の余裕を与えないし、それを取りに帰ったら、一しょにいる人が目を醒ますだろうと思って諦念めたそうだ。磚は造做もなく除けてしまった。窓へ手を掛けて押すとなんの抗抵もなく開く。その時がさがさと云う音がしたそうだ。小川君がそっと中を覗いて見ると、粟稈が一ぱいに散らばっている。それが窓に障って、がさがさ云ったのだね。それは好いが、そこらに甑のような物やら、籠のような物やら置いてあって、その奥に粟稈に半分埋まって、人がいる。慥かに人だ。土人の着る浅葱色の外套のような服で、裾の所がひっくり返っているのを見ると、羊の毛皮が裏に附けてある。