轻松读懂日语经典作品
ja-reading.com
轻松读懂日语,轻松阅读日语。在线阅读日语经典作品。支持在阅读过程中显示假名、查询生词、翻译句子。
ねずみざか
鼠坂
「中央公論」1912(明治45)年4月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 7,781 字 · 16 页
そこで女の服従したのは好いが、小川君は自分の顔を見覚えられたのがこわくなったのだね。」ここまで話して、主人は小川の顔をちょっと見た。赤かった顔が蒼くなっている。
「もうよし給え」と云った小川の声は、小さく、異様に空洞に響いた。
「うん。よすよよすよ。もうおしまいになったじゃないか。なんでもその女には折々土人が食物をこっそり窓から運んでいたのだ。女はそれを夜なかに食ったり、甑の中へ便を足したりすることになっていたのを、小川君が聞き附けたのだね。顔が綺麗だから、兵隊に見せまいと思って、隠して置いたのだろう。羊の毛皮を二枚着ていたそうだが、それで粟稈の中に潜っていたにしても、は焚かれないから、随分寒かっただろうね。支那人は辛抱強いことは無類だよ。兎に角その女はそれきり粟稈の中から起きずにしまったそうだ。」主人は最後の一句を、特別にゆっくり言った。
違棚の上でしつっこい金の装飾をした置時計がちいんと一つ鳴った。
「もう一時だ。寝ようかな。」こう云ったのは、平山であった。
主客は暫くぐずぐずしていたが、それからはどうした事か、話が栄えない。とうとう一同寝ると云うことになって、客を二階へ案内させるために、上さんが女中を呼んだ。