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あるおんせんのゆらい
ある温泉の由来
佐々木 邦
線上閱讀佐々木 邦《ある温泉の由来(あるおんせんのゆらい)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。
N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 14,655 字 · 30 頁
東からは僕一人だった。五年生と四年生がいたけれど、五年生は卒業してしまい、四年生は病弱と不成績の為め半途退学をしたのである。西からは四年生が一人、三年生が二人、一年生が一人だった。西の手前味噌によると、西は東よりも金持が多いから、中学校や女学校へ通うものも多い。一年生は早川君といって、僕と一緒だった。西引佐の大地主の息子だ。屋敷が立派だから、僕は以前から知っていた。恐らく西で一番の金持だろう。○○町へ行く時、否でも応でも門の前を通る。しかし早川君と初めて顔を合せたのは中学校へ入ってからだった。誰も紹介してくれないし、西引佐のものだと分っていたから、帰りに一緒になっても、僕は口をきかなかった。早川君も黙って横を見て行った。一週間ばかりお互に疎隔の努力をしたように覚えている。
或朝、僕は早川君の家の前へ差しかゝったら、早川君が門から出て来るところだった。視線が合った。しかし僕は伝統を守って、一足お先に失敬しようとした。
「小池さん」
と早川君が呼んだ。
「はい」
と僕は出席簿の返辞のように言下に答えた。
「一緒に行きましょう」
「行きましょう」
「君のお父さんを僕の親父、知っているんですよ」