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いやなかんじ
いやな感じ
高見 順
線上閱讀高見 順《いやな感じ(いやなかんじ)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。
N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 292,113 字 · 587 頁
床の男は血走った眼を俺に、縋るように向けていた。猿ぐつわの奥から、言葉にならない唸り声をあげて、助けてくれと俺に訴えていた。それは俺に妙な作用をした。よしやがれと俺は床の男を靴で蹴った。このみじめな男に俺は哀れみを覚えるかわりに、芋虫みたいなこいつを、この野郎とひねり潰してやりたくなった。凶暴な無目的の殺意が俺の内部に燃え立った。
ポンポンポンと発動機の音がして、舟が岸を離れた。こうした話を俺は波子をいためつけたい腹でやり出したのだが、中途でなんだか自分がいかにも脳留守(馬鹿)野郎に感じられてきた。前夜の俺はどうかしていた。あんな馬鹿な真似をする前に、なぜこの波子に会わなかったのだろう。
「あたしんとこへ訪ねてきたのは、その男の一人じゃないかしら」
と波子が言った。
「そんなはずはない、波ちゃんを知ってるわけはない」
そこへ女中がビールを持ってきて、会話が中断された。ふたたび二人きりになると、
「波ちゃんはここへお客と何しに来たんだ」
「マージャン」
「それだけか」
鉛色の海が窓から見える。
「俺は波ちゃんが好きなんだ」
「四郎さんは、ほんとに、人殺しをしちゃったの?」