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おじさんのはなし
おじさんの話
小山 清
線上閱讀小山 清《おじさんの話(おじさんのはなし)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。
N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 21,232 字 · 42 頁
その男も一寸頭のおかしいような顔をしていたが、それにしてもおじさんには、そんなふうに買い被られるだけの人品はたしかにあった。湯船の中ではみんな裸で、おじさんにしても新聞屋の記号のついたジャンパーなどは着込んでいないから、本来の値打が輝いていたのであろう。
おじさんの頭はもうだいぶ禿げ上っていたが、それでも鬢や後頭部にはまだ多少は毛が残っていた。鼻は高く大きくて、若いときは実際に好男子であったに違いない。背筋などもしゃんとしていて、おじさんの気概のほどが見えた。
いちどおじさんが店の朋輩と、とっくみあいの喧嘩をしたのを見たことがある。将棋をさしていたのだが、思いがけず、腕力沙汰になった。相手は店の者の中でも、気の荒い乱暴な男であったが、おじさんも屈せず応酬していた。すぐ留められたが、窓ガラスが毀れ、おじさんの額や唇から血が出た。見ていて、「元気だなあ。」という気がした。
朝刊の配達から帰って、朝飯を食べると、私たち配達はまたひと眠りするが、おじさんは朝飯をすますと、なにやら一帳羅のような着物に着かえて、これもまた色の変った中折帽を被り、手頸に小さな袋をぶらさげて、日本橋の蠣殻町の方へ出かけていく。