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おせん
おせん
邦枝 完二
線上閱讀邦枝 完二《おせん》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。
N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 74,074 字 · 148 頁
おめえ、こんなとこで、何をうろうろしてるんだ」
「へえ。きょうは親父の、墓詣りにめえりやした。その帰りがけでござんして。……」
「墓詣り」
「へえ」
「いつッから、そんな心がけになったんだ」
「どうか御勘弁を」
「勘弁はいいが、――丁度いい所でおめえに遭った。ちっとばかり訊きてえことがあるから、つきあってくんねえ」
「へえ」
「びくびくするこたァありゃしねえ。こいつあこっちから頼むんだから、安心してついて来ねえ」
鬼七と呼ばれてはいるが、名前とはまったく違った、すっきりとした男前の、結いたての髷を川風に吹かせた格好は、如何にも颯爽としていた。
折柄の上潮に、漫々たる秋の水をたたえた隅田川は、眼のゆく限り、遠く筑波山の麓まで続くかと思われるまでに澄渡って、綾瀬から千住を指して遡る真帆方帆が、黙々と千鳥のように川幅を縫っていた。
その絵巻を展げた川筋の景色を、見るともなく横目で見ながら、千吉と鬼七は肩をならべて、静かに橋の上を浅草御門の方へと歩みを運んだ。
「千吉、おめえ、おせんのところへは出かけたろうの」
「どういたしやして。妹にゃ、三年この方、てんで会やァいたしません」