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おせん

おせん

邦枝 完二

線上閱讀邦枝 完二《おせん》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 74,074 字 · 148 頁

青空文庫

春信の妹梶女だった。

「ここへ来や」

「へえ」

お屋敷者の見識とでもいうのであろうか。足が不自由であるにも拘らず、四十に近い顔には、触れば剥げるまでに濃く白粉を塗って、寝る時より外には、滅多に放したことのない長煙管を、いつも膝の上についていた。

「お兄様は、どちらにお出かけなされた」

「さァ、どこへおいでなさいましたか、つい仰しゃらねえもんでござんすから。……」

「何をうかうかしているのじゃ。知らぬで済もうとお思いか。なぜお供をせぬのじゃ」

「そう申したのでござんすが、師匠はひどくお急ぎで、行く先さえ仰しゃらねえんで。……」

「直ぐに行きゃ」

「へ」

「提灯を持って直ぐに、後を追うて行きゃというのじゃ」

「と仰しゃいましても、どっちへお出かけか、方角も判りゃァいたしやせん」

「まだ出たばかりじゃ。そこまで行けば直ぐに判ろう。たじろいでいる時ではない。速う。速う」

この上躊躇していたら、持った煙管で、頭のひとつも張られまじき気配となっては、藤吉も、立たない訳には行かなかった。

提灯は提灯、蝋燭は蝋燭と、右と左に別々につかんだ藤吉は、追われるように、梶女の眼からおもてに遁れた。