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おばなさわ
おばな沢
山本 周五郎
線上閱讀山本 周五郎《おばな沢(おばなさわ)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。
N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 22,479 字 · 45 頁
場所は尾花沢から暗闇谷といわれる谿谷へさがったところで、三百尺もある断崖に、蔓かずらで猿のかようほどの桟を渡し、それを伝ってなお谷へ下るという、まったく孤絶した位置にあった。砂金の鉱脈は露頭といって、がれに添って表面に見えている、しぜんに崩れて谿流に洗い去られたり、また採り尽されたりしたらしく、もうあまり豊富とはいえなかったが、それでも相当な量を見積ることができた。
藩では極秘のうちに手配をし、尾花沢の番所を増築して、最少限の人数で今年の雪溶けから仕事を始めた。十日にいちどずつ城へ使いが来るのは、つまり採った砂金を運ぶためだったのである。
採鉱のほうはわりかた順調であったが、現場には絶えず不穏な影がつきまとっていた。あの伝説的な土民の一群――丸庄で捕えられた男はその一人であるが、――かれらはその砂金鉱を自分たちの財産だと信じていた。かれらは七百年の昔からそこを守り、そこから採った金で生活して来た。先祖代々いかなる領主にも屈せず、その踪跡を知られることもなく、原始林と人跡の絶えた峡谷の奥を転々し、なにものにも束縛されない自由な年月をすごして来た。