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たきび
たき火
国木田 独歩
線上閱讀国木田 独歩《たき火(たきび)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。
N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 3,674 字 · 8 頁
火の燃えつかざるを口惜く思い、かの年かさなる童のみは、後振りかえりつつ馳せゆきけるが、砂山の頂に立ちて、まさにかなたに走り下らんとする時、今ひとたび振向きぬ。ちらと眼を射たるは火なり。こはいかに、われらの火燃えつきぬと叫べば、童ら驚ろき怪しみ、たち返えりて砂山の頂に集まり、一列に並びてこなたを見下ろしぬ。
げに今まで燃えつかざりし拾木の、たちまち風に誘われて火を起こし、濃き煙うずまき上り、紅の炎の舌見えつ隠れつす。竹の節の裂るる音聞こえ火の子舞い立ちぬ。火はまさしく燃えつきたり。されど童らはもはやこの火に還ることをせず、ただ喜ばしげに手を拍ち、高く歓声を放ちて、いっせいに砂山の麓なる家路のほうへ馳せ下りけり。
今は海暮れ浜も暮れぬ。冬の淋しき夜となりぬ。この淋しき逗子の浜に、主なき火はさびしく燃えつ。
たちまち見る、水ぎわをたどりて、火の方へと近づきくる黒き影あり。こは年老いたる旅人なり。彼は今しも御最後川を渡りて浜に出で、浜づたいに小坪街道へと志しぬるなり。火を目がけて小走りに歩むその足音重し。
嗄れし声にて、よき火やとかすかに叫びつ、杖なげ捨てていそがしく背の小包を下ろし、両の手をまず炎の上にかざしぬ。