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あわもりものがたり
『たぬき汁』以後
佐藤 垢石
線上閱讀佐藤 垢石《『たぬき汁』以後(あわもりものがたり)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。
N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 118,470 字 · 244 頁
であるのに、大正十五年以来、利根川の鮎は川田村から上流へは遡らぬようになった。下流の渋川方面には時局のおかげで、いろいろの工場が設立されて毒水を流す。白根山の悪水は年々、濃度が高くなる。
ああ、利根の鮎はついに、亡びるのであろうか。
昭和七年であったか八年であったか、白根火山が、大噴火した直後、十二月一日、友人五、六人と共に、草津から雪を踏んで頂上の大きな火口を覗いたことがあった。
白根山は、噴火と同時に、どんな位の毒を火口から吐きだしたかを調査するのが目的であったが、科学者でない私達に、そんなことがわかろう筈がなかった。しかし案内の話によると渋峠から東南によったところ、ものの貝池の北に寄った方面に積もった火山灰には夥しい毒が含まれているそうだ。
それが、雪解け頃になると雪代水と共に流れだし、下流の魚類を鏖殺するという話である。草津温泉の上手から流れだす毒水沢には、硫酸そのものといっていいほどの水が流れていて、それが須川に注ぎ、須川は長野原で、吾妻川に注ぐ。
さらに、それから二、三里上流の西久保には万座川が、火山の悪水で流れを黄色に染めて吾妻川へ注ぎ込んでいるから、吾妻川は西久保から下流は全く生物の棲めない地獄の川となっている。