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あわもりものがたり

『たぬき汁』以後

佐藤 垢石

線上閱讀佐藤 垢石《『たぬき汁』以後(あわもりものがたり)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 118,470 字 · 244 頁

青空文庫

ちょうど我々が、春風が訪れても、木枯が吹きすさんでも、朝起きれば赤城、榛名の姿に接し、大利根の瀬音に耳を傾けつつ育ったのと同じであろう。

我々からみれば、東京はまことに殺風景のところだ。私も永い年月東京住まいをしたけど、なんとなく潤いある情味に乏しい。でも、木村君に取ってはそこが唯一無二の故郷なのだ。そして、無上の愛着を感じているという。

木村名人の気持ちは、よく分かる。

それを想うと、木村君に比べて、なんと我々は恵まれた土地に生を享けたことであろう。眼をやれば、千々に重なる山の容。青き野原。一歩すれば、足下に流るる清冽な水。花弁重たき菜穀の田畑。さらに接するにわが生まれた里人の醇朴な温情。

国破れて、山河ありとは支那の言葉だ。わが日本では、飽くまで国栄え、山河朗々である。万一、国亡ぶれば、山河もない。

死に徹するまで、郷土の清婉なる風景を護るわが国民である。それが、日本の伝統だ。わが伝統は、国民を清からしめた。我々は、無言の間に、天命かけてわが美しき風景を護っているのである。山、河、野は我々の心である。

ああ上州よ、上州よ、赤城よ、榛名よ、利根川よ、われは汝と生死を共にして、行くところまで行くであろう。