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だだらだんべえ

だだら団兵衛

山本 周五郎

線上閱讀山本 周五郎《だだら団兵衛(だだらだんべえ)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 12,271 字 · 25 頁

青空文庫

「まあ待て――」

「いや待ちませぬ、是非!」

頑としてきかぬ。

「ではどうあっても腹切ると云うか」

「御手打となるはずにて津を立退いて参った私、このたびのことも初めより覚悟あってのことにござります、もはやお止めだて無用!」

きっぱりと云い放った。

三十郎も八郎太も、この諍いばかりは手が出せない。光政はしばらく団兵衛を見戍っていたが、梃でも動かぬ決心がよく分ったので、やがて胸のうちに何か頷きながら、急に声を荒げて云った。

「よし、それほどに申すなら何も云わぬ、しかし腹切るまでもなく、約束どおり今改めて余が手打にいたす、庭へ出い!」

「はっ、有難き仕合せ」

答えるより早く、すっと立って庭へ下りた。

団兵衛が芝生の上へ端然と坐ると、光政は佩刀を抜いてつっと背後へ回った。

「覚悟はよいか?」

と声をかけると、団兵衛は静かに、

「御刀を汚し恐れ入ります」

と云って頸をさしのべた。とたんに光政の佩刀が空を切る。

「やっ!」

声とともに、団兵衛の髻がばらりと切れてとんだ、驚く団兵衛には眼もくれず、

「死骸を取片づけろ」

そう云いすてて光政は、さっさと奥へ立去ってしまった。

黄金二百両、御肌付白無垢ひと重、それだけが団兵衛への下され物であった。