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ちいさこべ

ちいさこべ

山本 周五郎

線上閱讀山本 周五郎《ちいさこべ》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 33,480 字 · 67 頁

青空文庫

もなかったか」

徳二郎はむっとしてやり返した、「それとこれとは話が違うだろう」

「たしかに違う」と茂次が頷いた、「おれたちには親もあり家もあった、だから一度だってぬすっとなんて云われたことはない、この子供たちは家を焼かれ、親きょうだいにも死に別れて、他人のおれの手にかかってる、それだけの違いはあるが、子供ということに変りはねえし、子供はたいてえいちどはこういう年ごろをとおるんだ、おらあ口がへただからうまく云えねえが」茂次はもどかしさのあまり赤くなった、「自分が不自由していなくっても、ひょいと人の物に手を出してみたくなる、そういう年ごろが子供にはあるんだ、誰にだって二度や三度は覚えのあるこった、もちろん、それだからいいとは云やあしねえが、ぬすっとだとか自身番へ渡すなんていうのはあんまりだ、あんまり人情がなさすぎるとは思わねえか」

三人はなにも云わなかった。

「こう云っても承知できねえんならおれが出よう」と茂次は云った、「躾がゆき届かなかったのはおれの責任だ、自身番でもどこへでもおれを突き出してくれ、だが子供は渡さねえ、誰が来たって、子供だけは渡しゃあしねえから」