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つばくろ

つばくろ

山本 周五郎

線上閱讀山本 周五郎《つばくろ》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 21,987 字 · 44 頁

青空文庫

片手で自分の膝を掴み、片手で涙を拭きながら、……高雄は聞きたくなかった、叱りつけようとさえしたが、松助がのっけに森三之助が重態であって、余命いくばくもないと云いだすのを聞くと、つい知らず話しにひきいれられた。

森三之助は数年まえから肺を病んでいた。自分でも気づかなかったが、あの夜、高雄に闇討をしかけて、顛倒したとき、ふいに喀血したという。高雄が去ってから四半刻も動くことができず、這うようにして宿所へ帰った。……猿ヶ谷へはおいちに七日ほどおくれていったが、着くとすぐにまた喀血し、そのまま寝たきりになったそうである。

おいちは三之助とはずっと離れた部屋で寝起きをした。三之助の部屋にいるときは、必らず障子をあけておいた。宿帳にはもちろん偽名であるが兄妹と書いて、それが宿の者に少しも疑がわれずに来た。……紀平とはっきり縁が切れるまではそれが当然だろう、松助はそう思っていた。そのまえにもしふたしなみなようすでもあったら、容赦なく面罵してやるつもりでさえいた。しかし二人の態度はいつまでも変らず、松助の眼にもすがすがしくみえるようになった。かれらは殆ど話しをしなかった、同じ部屋にいるときでも、おいちは縫い物をしたり薬を煎じたりし、三之助は黙ってしんと寝ていた。