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ひとごろし

ひとごろし

山本 周五郎

線上閱讀山本 周五郎《ひとごろし》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 22,607 字 · 45 頁

青空文庫

の立つようすもなかった。

「武芸者もあのくらいになると」と六兵衛は呟いた、「あるきかたまで違うんだな」

彼は感じいったように首を振り、そろそろあるきだした。

昂軒は松任で宿をとった。六兵衛はそれを見さだめてから同じ宿に泊り、明くる朝、昂軒がでかけるのを待って、あとからその宿を立った。昂軒と同宿しているということで、六兵衛はおちおち眠ることができなかった。どうすれば討てるかと、いろいろと思案したけれども、これといううまい手段が思いうかばず、ともすると「荒神さま」という言葉にひっかかった。

「なにが荒神さまだ」と彼は昂軒のあとを跟けてゆきながら首をひねった、「こんなところへなんのために荒神さまが出てくるんだ」

仁藤昂軒は金沢へは寄らず、北国街道をまっすぐにあるいていった。金沢城下は騒がしく、なにやらものものしい警戒気分が感じられた。往来の者の話を聞くと、将軍家重が上洛するとのことで、怪しい人間の出入りを監視している、ということであった。将軍家の上洛なら東海道であろう、こんなに遠い加賀のくにで、往来の者を警戒するなどとはばかげたことだ。そう云ってあざ笑う者もいた。