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ひとりすもう
ひとりすまう
織田 作之助
線上閱讀織田 作之助《ひとりすまう(ひとりすもう)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。
N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 20,706 字 · 40 頁
そういうぼくを明日子は何と見たのだろうか。恐らく二十一歳の青年の子供じみた陽気さと見たことだろう。陽気といえばある瞬間ひどく陽気だったが、それはいつ迄も続かなかった。
やがて明日子は船にのり、船が動き出した。明日子は甲板で手を振った。轡川もぼくも手を振った。ぼくは腹が痛んで来たので手を振るのを止めた。手を振るのを止めるとかえって顔をじっと見つめる様になり、そのため、明日子は手を振っている轡川によりも振らないぼくのために手を振っているように見えた。ぼくの己惚れがそう思わせたのだろうか。ぼくはその瞬間彼女を浮気な女だと思いこむことを止そうと思った。が彼女を浮気な女でないと思える様な自分をうなずかせるに足る根拠の無いことが悲しかった。その時ぼくはひどくセンチメンタルだった。
だが轡川は勿論もっとセンチメンタリズムを発揮した。彼はその夜、泥酔して哀れであった。ぼくにカフェーに行こうと誘ったので、ぼくは身体にさわるからと断り、この辺のカフェーは淫をひさぐ家であるから、あなたも後で後悔しない為には今夜は行かぬ方がいいだろうと言うと、彼は、そうだそうだといい出し、あなたは身体に気をつけて丈夫になってくれ、自分はもう駄目だ、とおいおい泣き出した。