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ひとりすもう
ひとりすまう
織田 作之助
線上閱讀織田 作之助《ひとりすまう(ひとりすもう)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。
N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 20,706 字 · 40 頁
ぼくは、しかも彼女から愛されているのである。ぼくは、彼女が多少ともぼくに心を惹かれたということが、彼との絶交を決定的にする一つの動機を作ったのではないかと己惚れて考えた。
ぼくも亦、彼女の様に、「あのこと」をなつかしもうと、ぼくはひそかに唇をとがらして見た。そして、自然にその唇から口笛が流れた。口笛が呼んだという恰好で、轡川がぼくの部屋にはいって来た。ぼくは手紙を素早く隠したが、果物籠の処置に困った。それで止むを得ず、和歌山の知り合いから送って来たといい、彼に果物をすすめた。
彼は前夜の泥酔をひどく恥しがり、照れた表情で蜜柑の皮をむいた。ぼくはもはや明日子を彼の言う様な女でないと信じた以上、再び当然の成行として、彼を嘘言を弄した男であると思わねばならなかったのだが、彼のそんな顔を見ていると、どうしてもその様に思うことは出来なかった。彼が、その果物を明日子の贈物とも知らずに、うまそうにたべながら、あなたはいい人ですね、と言うのをきくと、ぼくもまた、負けずに、彼をいい人間だと思おうとした。そして、ふと、ぼくが彼を善良な人間だと思う以上、明日子もまた彼の中に何か良いところを見ているのではないかと思われ、彼女が嫌いだといいながらも今まで彼と関係を続けて来たのも、あるいはその辺のところから来るのではなかろうかと思っ