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ほととぎす
ほととぎす
堀 辰雄
線上閱讀堀 辰雄《ほととぎす》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。
N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 30,252 字 · 60 頁
と言い出され、又皆を騒がせて車にお乗りになり、帰って往かれた。
殿をお見送りした後、一人ぎりになって、私はそのままいつまでもその暮れようとしている庭面をぼんやりと見入っていた。一種言うに言われないほどの好い匂が、ときおりその夕闇のなかに立って、それがまだ鶯なんぞを寐つかせないでいるらしい。西の対あたりから、それに雑って、つい今しがた少女の習い出したらしい琴の幼い調べが途絶えがちに聴えて来る。――私はふとこんな美しい春の夕をさえあの御方はまあ山里にお一人でどうして入らっしゃるだろうかと思いやった。あたりのいかにも充ち足りたような、懶い位の、和やかさが、反ってそういう悲しみの多い人のお気の毒な身の上を、その一々の悲しみをまで、残酷なほど鮮かに、生々と私に描かせていた……
この春は、祭や物詣などにその少女が珍らしがって往きたそうにしているので、そう若いものばかりだけを出してやることも出来ないので、私も連れ立って一しょに出かける事もつい多かった。
しかし又春の末からは何かと物忌が重なり、家に閉じ籠もりがちだったけれど、去年までは家の柱などに御守札などを押し付けてあったりするのを目に入れると、この夢ほども惜しいと思われない生をさも惜しんでいるかのような気がされて、自分らしくない事だと心苦しかったが、今年はどういう